Contour / Hearing Voices “L.A. リベリオン”の意思を継ぐ者が打ち出した、今日的なブラック・アート
Text by Yuki Kawasaki
第90回アカデミー賞(2018年3月)では、実に素晴らしい映画がショウレースを彩っていた。ギレルモ・デル・トロの『シェイプ・オブ・ウォーター』やマーティン・マクドナーの『スリー・ビルボード』が作品賞を争い、『ダンケルク』や『ファントム・スレッド』、『レディ・バード』が広く話題を集めた。人種間の対立が潜在的にはらむ問題をサプライズ・スリラーとして描いた『ゲット・アウト』も喝采を浴びた。
この年に名誉賞を受賞した、アフリカ系アメリカ人の映画監督がいる。それがチャールズ・バーネットだ。UCLAで映画制作を学んだ彼は、在学中に60年代後半に端を発する“L.A. リベリオン”グループの一員として、ハリウッド映画とは異なる新しい“ブラック・シネマ”を模索した。当時のUCLAは圧倒的に白人優位で、映画業界全体で考えても有色人種の姿は極端に少なかった。今でも 「#OscarsSoWhite」(https://www.harpersbazaar.com/jp/culture/tv-movie/a32863015/oscars-representation-inclusion-standards-best-picture-nominees-200615-lift1/) のような運動が起きるぐらいなので、当時の様子は推して知るべし。2019年にNetflixが制作した 『ルディ・レイ・ムーア』(https://youtu.be/0qWO3cjijvs) (70年代に活躍したアフリカ系アメリカ人のコメディアンを描いた映画)を観ても、その不均衡な状態が確認できるはずだ。コメディアンとして年季の入ったルディよりも、UCLAに通う学生の方が「映画」を知っている。
この時期に見過ごされてきた傑作は多く、先述したチャールズ・バーネットはアカデミー賞だけでなく、ニューヨーク・タイムズにも「全米で最も知られていない偉大な映画監督」と評されている。
2022年に入り、“L.A. リベリオン”の意思を継ぐ者がサウス・カロライナから現れた。ミュージシャン、作曲家、映画やラジオのプログラマー、モデルなど、多面的な活動をしているContour(コントゥアー)である。